「欧州どまんなか」 April  15, 2003
ミュンヘンの住宅事情

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昔フランス人の義兄の友人が我が家に滞在したとき「学生時代の友人は特別だ」といった。就職してからも私たちはたくさんの人々に知りあう。でも人間関係が利害と絡んでいると彼は残念がった。私は、当時フランス人も日本人もあまり変わらないと思った。

数日前に、私の大学時代の友人がミュンヘンにやって来た。彼は日本の大学で哲学を教えている。日本で彼はしっかりして見えるのにドイツに来ると頼りなく、世事に疎い感じがする。私は、彼がドイツで不愉快なめにあってはいけないと心配し世話を焼くが、これが面倒にならない。現在、彼の半年間の滞在ために調度付き住居を、私はさがしている。

最初に見た住居は、ミュンヘンの郊外にあった。大きな家の三階の一部を改造しシャワーとトイレと台所を取り付けただけで、入り口が独立していない。出入りに家の中の階段をつかうのが難点と思われた。住居は50平米近くの広さで、隔週に掃除しれもらえて、家賃が邦貨で約9万円。家は三階建てで、建築面積が百平米をこえる。300平米以上の巨大な居住空間に、家主の女性が小さな子供と2人だけで住んでいることになる。

昔は子供が三人も四人もいるのが普通で、郊外にこのような大きな家、町中に六部屋もあるフラットの住居があった。今や時代が変わって、独身所帯者、未婚の母、老人夫婦などが多くなり、人口は増加しないのに所帯数は核分裂のように増える。現在一人所帯が40%近くを占め、そのために小さい住居がどこの町でも不足しているといわれる。

ミュンヘンの家賃は、ハンブルクより28%、西ベルリンより70%、東ベルリンより138%も高く、全国一である。これは、企業もミュンヘンにひかれ、流入人口が多いために住居不足になり家賃が高騰する。ちなみに、ベルリンは出て行く人が多く人口が減少し続けた。これに歯止めがかかったのは二年前で、ひところ移り住む人は、首都を特別視する日本人だけのように思われるときがあった。

次は、中国人留学生からのまた借しを受ける学生寮のなかの住居で、家賃は6万円足らずであった。私たちは中を見ることができなかったが、友人は周囲が場末だと文句をつける。私は近くに住む有名人の名前をあげて、内部がよければ考慮に値すると主張した。

三つ目の住居は北東部で町の一郭にあった。昔トーマス・マンが近くに住んでいたと私がいうと、彼はほっとする。ドアを開けたのは三十歳前後の美しい女性であった。内部はグレーで絨毯と壁と調度がうまく調和して本当に美しい住居であった、、、私は自分がこの部屋で眼を覚まし、ベットに寝たままで前の晩に起こったことを思いだそうとする、、、私は、一瞬自分が年甲斐もない妄想にふけっているの気がつく。

彼女は仕事で半年ニュールンベルクへ行くので住居を貸すことにしたという。友人にも、住居以上に家主が気に入ったようである。喫煙者の彼がタバコを吸うのを台所に限定することで、彼女は貸すことを承諾してくれた。でも彼が赤いワインをこぼして絨毯を台無しにしてトラブルになることが、私には心配になる。家賃は9万円であった。

子供は大きくなって家を出て行く。大きな住居に残された老夫婦が巨大な居住空間を占拠してそこに住む。また都会でなく、落ち着いた場所で、また気候のよい外国で小さな住居に住みたがる人もでてくる。子供たちの世代は昔のような子供のいる所帯をつくらない。でも両親はこれをあてにして住居を手放さない。こうして空っぽのままの大きな住居が、住居難にかかわらず多数あるといわれる。

またこのような古い大きな住居を取り壊してシングル向けのモダンで小さな住居がつくられる。これに投資すると税制上の優遇措置を受けることができるので、子供のために購入する人が多い。美しい女性の住居も、彼女の両親がそのような思案から買っておいたような気がした。でも家賃が高いために空っぽのままの住居も少ないといわれる。

シングル向けといっても50平米以上もあるので、昔は大所帯で住んでいた頃のドイツ国民と比べて、一人あたりの居住面積がどんどん大きくなる傾向にある。狭い居住空間で暮らす外国人移民をのぞくと、平均居住空間は30平米をこえ、この傾向は今後も継続する。でもこれは浪費で、10年、20年後エネルギーコストが上昇したら話が別になるかもしれない。

最後に見たのは町中で、一番てっぺんにあって、天井が斜めのマンサード屋根の住居であった。友人が屋根裏ということで軽蔑するので、ドイツでは特に好まれ、昔有名な画家も光線がよいために一番上に住んていたと私は強調する。50平米以上で広く、家賃も今までのなかでは一番安かった。建物は頑丈で、二十世紀初頭にできたものと思われた。難はエレベーターがついていないことで、だから家賃が低いと思われた。

今のところ、友人がどの住居にするか見当がつかない。

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