「欧州どまんなか」 November  05, 2002             目次に戻る
ドイツに洗脳された日本人、、、、
、、、とは、私のことである。(いわれる前に自分からいっておく)。これも、本当に長年ドイツに暮らしているので仕方がない。テーマによるが、自分の考えが日本からずれることがときどきある。少し前、日本政府が「五人の拉致被害者並びに北朝鮮にいる被害者家族の永住帰国」を決定したが、そのときもそうだった。

私は色々な国で暮らす人とメールをもらうことがあるが、例えばイタリア在住の日本人女性から見れば、
<日本に住む日本人の大部分は勿論日本が一番良い国、住みやすい国と信じ、、、海外に生活する者は不幸せである、日本に帰ってくるべきであるという意見を押しつけたがります。現在の海外で住んでいる環境がどうであれ、その人が、今までそこで生活をしていという観念が抜け落ちていますね。>
ということになる。彼女以外にも海外で暮らす日本人から似たようなメールを幾つかもらった。彼女はイタリアに、その他の日本人は各々の滞在国に洗脳されている。そう思っていると日本に住んでおられる大学時代の同級生から手紙をもらう。

<、、この国ではもうとっくに失われたと思っていた家族的同胞意識の突然の奇妙な復活。、、今のこの「感情」の沸騰には日本全体の心理的な閉塞状況が背景にあるのかもしれません>
と書いてある。私は、自分の暮らす国が一番よいと思う人が好きである。ほほえましいではないか。他国の悪事に憤慨することは間接的に自国をほめることであるが、国際社会で昔から「石器時代共産主義」と悪口をいわれている国を、事件の当事者でもない人が今更過剰に怒っても仕方がない気がする。

日本政府の「拉致被害者五人の日本永住帰国決定」は私には日本語として奇妙に思われた。これも私がドイツに洗脳されて、頭の回転の早い日本社会の思考についていけないのかもしれない。でも「帰国」とは自国に帰ることではないのだろうか。昔日本で暮らされた拉致被害者についてはそれでいいが、その「家族の永住帰国」となるとヘンである。北朝鮮に住む家族とは、米国人の男性伴侶と、北朝鮮で生まれ育った子供たちである。そのうち、亡くなられた日本人女性が残した女の子の場合、正確には親権者の北朝鮮人・父親と継母とその子供になる。これだけ日本が「自国でない」人たちが含まれているのに、、、、

この決定について、日本政府関係者は「、、そもそも5人は(北朝鮮の)国家犯罪による犠牲者であり、北朝鮮との合意を守らなくても国際社会の理解は得られる」と思っているとのことだが、本当にそうなるであろうか。

そもそも外国人であろうが日本人であろうが、日本の政府が自国に居住することは強制できない。そんなことなど日本政府関係者にもわかっていることで、だから新聞記者に対して「政府が(永住を)決定したので、(本人には)『日本人なんだから従って滞在して下さい』とお願いする」などと奇妙なことをいう。私は笑ってしまった。

今までのところ、国際社会のメディアは、拉致被害者の親・兄弟の「北朝鮮に戻るなら逆・拉致する」といった発言を引用して「ならず者国家」対日本の「奇妙な国際的ファミリードラマ」に滑稽に思っているところがある。でもAP電には「日本政府の決定が、外交問題をこじらせて、拉致被害者が日本に二十年前に日本に残した家族と、新たに築いた家族の間で身の引き裂かれる深刻な悲劇をうみだす」とあった。

日本はせっかく「ならず者国家」と合意していたのに、なぜ誰もが望まない方向に話が進むのか。これは、「拉致被害者が二十年前に日本に残した家族」の立場から憤慨・同情する「世論の圧力」に、日本の政府が抵抗できなかったからとされる。

「外交辞令」というコトバがあるように、外交とは如才なく、ある程度までいい雰囲気をつくり、相手が極悪人と思っていても表情に出さず、交渉目標を達すればいい。その点で、外交は相手が悪いと叫ぶ裁判官の前の議論と異なる。今でもどこか密室的な性格があり、外電で相手国が重要な決定を知るようになる状況は避けるべきとされる。次に、色々のな国があるのに、外交の世界では昔からどの国も同等で、また善意をもつことを前提としてふるまうことになっている。

とすると、外交は世論から少々離れた軌道の上で展開されなければいけない。日本では今回、感情が沸騰して外交が困難になり、交渉がデッドロックにのりあげたのではないのか。

今、北朝鮮がミサイル発射実験をするといううわさがある。これも、表現手段のとぼしいこの孤立国家特有の、米国に対して交渉を希望するアッピールとされるが、イラクとのつりあいで米国ものれない。日本には北朝鮮という「ならず者国家」を少しだけでも国際社会に組み入れる役割が期待されていた。日本が「奇妙な国際的ファミリードラマ」で前に進めないのは本当に残念である。

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