「欧州どまんなか」 April 11,2001                      目次に戻る

ここがヘンだよ! ノイマン君



「今日僕の日本人についての本、『イケてない日本‐日本人のホントのところ』が本屋で買えるようになります。、、日本に来てから5年間日本人の冷たいこころ、外人コンプレックスなどで悩んできました」

というメールが少し前に来た。日本関係者ドイツ人がつくるメーリングリストを経由してである。この本の著者はノイマンというドイツ人留学生で、「ここがヘンだよ! 日本人」というテレビ番組に出演しているという。

この本がきっかけとなって、メーリングリストで活発な議論がはじまった。それは、ノイマン君のホームページで本の一部を読んだ発言者が「ここがヘンだよ」と思ったからである。

「日本には、足を引き摺って歩く人もいるし、、、(肩こり防止のために)首をまわす人も、駅のホームで傘を使ってゴルフ・スウィングの改善に努める人もいるかもしれない。でもそのどこが悪いというのだろうか、、、」と東京滞在三年目のドイツ人ビジネスマンが反論する。

確かに足を引き摺って歩くのも、(体操の時間以外に)首の旋回運動をはじめるのも、また傘によるゴルフ練習もドイツでは見ない光景である。だからノイマン君は苛立つ。

日本へ行って何かドイツにないことを見てイライラするノイマン君も、ドイツにコンビニがないとに怒る日本の若者も、マクドナルドへ行って意気投合、コカコーラで仲良く乾杯。そうすればいいと私なら思う。

次に批判されたのはノイマン君の書き方である。他人を貶め、痛めつけて拍手を得ようとする傾向が強すぎる。ノイマン君は次のように答えて、暗黙にこの批判点を認める。

「日本人は外国からの批判に耳を傾ける。マゾヒストといっていいくらいである。この番組(=「ここがヘンだよ! 日本人」)の高い視聴率もこのためだ。私の本も日本人の眼には侮辱でなくて、文化論的貢献である」

ノイマン君と共演する別のドイツ人も外国人から悪口をいわれて快感を覚える日本人のマゾヒズムを強調し、ドイツなら「番組開始後15分もしないうちに自分と同じ髪型の丸坊主の若者が150人は現われて、、放送局をぶっ壊す」と述べた。

でも、彼らが言うように、私たち日本人は本当にマゾヒストなのであろうか。番組を見たことがない私は、日本に住むドイツ人の番組評を読みながら色々と想像するしかない。

「国際社会で自国は土下座ばかりしている」とか「いつも殴られている」というイメージをもつ人はどこの国にもいる。これは自分が虐待されていると想像するのが好きなだけの「自虐妄想」で、マゾヒズムと区別されるべきである。

ヨーロッパなら、この「自虐妄想」的土壌の上で極右政党が得票をのばすのだが、日本人は、テレビのなかで外国人に言わせ放題の無礼講を開催し、見世物にして、憤慨したり、共感したりしてけっこう楽しんでいるのではないのだろうか。

日本人がマゾヒストだなんて、、、純情なドイツ青年に心配させて、私たちは一筋縄でいかないワルである。ちなみに、ことが権利関係となると日本人は在日外国人に対して「マゾヒスト」でない。

東京在住のドイツ人だけでなく、地方に住み、町役場で働くドイツ女性も発言した。彼女は番組が「urusai」ので、かなり前から見ないそうである。

「この番組が日本人に外国人を身近なものにするのに役立つ」というノイマン君の説に、彼女は反対し、出演者は普通の人間でなく、「ガイジン」の役を演じているに過ぎないと指摘した。また、ノイマン君が本のなかで日本人との共通点でなく、相違点ばかりを強調することを彼女はとても残念に思う。

こう思うのは、彼女をはじめメーリングリスト発言者が、日本で自分達は外国人である以上に「外国人」として扱われていると思っているからである。

私たちにとって、「日本人である」とは「外国人でない」ことであり、彼らが「外国人」でなくなると、私たちのほうが困るのである。

こうして、私たちは身近にいる外国人にも自分達と異なる「遠い存在」であり続けて欲しいと思う。この願望は、個人レベルで見ると、倒錯的としかいいようがない。

この願望に不吉なものを感じ、「協力者」になることを拒絶した外国人は今までもたくさんいた。今回メーリングリストでの発言を読んでいて、ノイマン君のような熱心な「協力者」は将来少なくなるような気がした。


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